
⭐️ はじめに
あくまでもこのページは栽培経験がまだまだ未熟な初心者が作成しています.
用語が適切でなかったり,また考え方にも賛否両論あると思います.
しかし,日々施行錯誤して栽培方法を研究しておりますので,暖かく見守っていただければ幸いです.
⭐️ チランジアって何??
チランジア(Tillandsia)はブロメリア科(Bromeliacea)のチランジア属の事で,私たちもよく食べているパイナップルの親戚です.
現地で木や電線にへばり付いて成長している姿からエアープランツという名称でも親しまれており,百円ショップや花屋にも良く置かれています.2020年現在でも毎年新種が登録されており,原種で700種以上も登録されているようです.
また,実生(種から育てる事)は日本の気候ではかなり難しいですが,近年無菌培養を一般家庭でも行う栽培家が増えてきており,素晴らしい交配種がたくさん出回るようになりました.
⭐️ チランジアの一生
チランジアの一生は儚く、一度開花するとその株はそのうち枯れてしまいます.
しかし後述の如く,一部を除いてはほとんどの株が子株を作ります.
株が充実して開花をした場合複数の子株を作る事があり,また子株は親株から栄養を受け取るため成長がものすごく早いです.
例えば,我が家のブラデアナはそこそこの大きさで家に迎えてから2年ほどで開花しましたが,その後の子株は半年に1度ほどのペースで十分に成長し開花しています.
子株が増えるとクランプ(複数の株の集合体)を形成し,一斉開花した姿はとても美しいです.
子株は基本的に株元から生えますが,中には花序から子株が成長するものもあり,このような形態をヴィヴィパラと呼びます.
インターメディアやソムニアンス,ダシリリフォーリア等がviviparaとして知られています.
子株を出さない種はモノカルピック(この用語の使い方は賛否両論あり)と呼ばれています.
マコヤナやデュゲシー,エイジー等がありますが,グラス(たくさん生える小さな子株)を除いては実生で増やすしかないので,基本的にあまり出回りません.
開花した際に受粉すると結実し種をつけます.
実生に関してはオリジナルの交配種を作ることも可能で非常に魅力的ですが,日本の気候では発芽が難しく,また開花するサイズになるまで相当な年数がかかるため,かなり難易度は高いです.
実生にチャレンジしない場合はシードポッド(種の入った鞘)を除去してしまった方が子株の成長が速いです.
実生にチャレンジしたい場合はへご板やベラボン,コルク,場合によってはキッチンペーパー等に蒔いて,温度・湿度・光量・通風を保つことで発芽させる事ができます.また環境さえ整っていれば,何もせずとも破裂したシードポットから発芽させることも可能です.

クランプを形成している.
※T. ionantha ‘fuego’
⭐️ エアープランツって水はいらないの?
結論から言ってしまうと水やりは必須です.
チランジアには根が生えていない状態で販売されているものが多いですが,水は葉の表面にある小さな穴から吸収します.(根の役割に関しては様々な見解がありますが,個人的には着生が主たる役割で,栄養や水分の吸収はほとんどしていないのではないかと思っています.)
葉の表面に水を吸収しやすくするトリコームが生えているものは銀葉種と呼ばれており,逆にトリコームが無い物(少ないもの)は緑葉種と呼ばれてます.
現地でもしっかりと雨水や濃霧で出現した水分を吸収しており,決して空中の湿度で生きているわけではありません!

●トリコームが生えていると白く見える
※T. ionantha ‘Godzilla’

●トリコームが生えていないものは緑に見える
※T. achyrostachys
銀葉種は乾燥や日の光に強く,緑葉種は日陰で湿度の高い環境を好みます.
逆に銀葉種を日陰や乾燥しにくい環境で育てているとトリコームが育たない事があり(剥げてしまう),トリコームの役割は水の取り込み/蒸散防止/光を遮る,等の役割があるのではないかと推測されます.

⭐️ 水やりの方法と頻度は?
- 水やりの方法はミスティング(霧吹き)やディッピング(水につける),ソーキング(長時間水につける)等があり基本的にはミスティングを行うのが一般的と思われます.
しかし,長期の乾燥で弱っている株,ハダニやカイガラムシがよく付く株(これらの害虫は水に弱い),葉の形状からミスティングでは全体的に水が届かない株等は状況に応じてディッピングやソーキングを行います.
ミスティングを行う場合も全体がまんべんなくビショビショになる程度に水をあげるのが良いと思われます. - 水やりの頻度は一般的な書籍等では週に1〜2回と記載されている物が多く,水をあげすぎると蒸れて腐るとも言われています.しかし実際は環境を整えれば毎日水をあげて,なおかつ株元に水を貯めても腐りません.
むしろその方が成長が早くなります.

※ミスティング
我が家では植物の数が多すぎるので左のように6Lの圧力式噴射機を使用しています.
もちろん数が少なければ普通の霧吹きを使用しても大丈夫ですが,ある程度数が増えてくると水やりだけで相当疲れますし,時間もかかります.
圧力式の噴射機は小型のものも比較的安値で販売しているのでおすすめです.
また,ノズルの付いているタイプは高いところや狭いところにまで水をあげる事が可能です.

※ディッピングまたはソーキング
葉の隙間までしっかりと水をあげたい時はこのようにディッピングをします.
我が家では大体5〜10分ほど実施しています.
ソーキングは最低2〜3日に一回のペースで水をあげて,加湿器を使用し湿度も高めにコントロールしていれば乾燥しないため行なっていません.
ソーキングはあくまでも最終手段です.
⭐️ チランジアにとって良い環境って何?
一般的な植物と水あげの方法が全く異なるため,初めて育てる人で枯らしてしまう人は多いと思います.
しかし,経験上では多肉や洋蘭,食虫植物等の他のBizzare Plantsと比較するとチランジアが最も一年中室内の環境で育てやすいと思っています.
そのため,現状では将来的に温室を建てるまではチランジアをメインに育てていく方針としています.
チランジアの栽培で必要なものは
1️⃣ 光:太陽光(適宜遮光は必要)が最も自然だが,経験上LEDで代用可能.
2️⃣ 水:環境が整っていれば,毎日あげても全く問題ない.
3️⃣ 風:直接風が当たっていなくても,室内の空気が対流していればOK.
4️⃣ その他:温度や湿度など.
これだけ気をつけていれば適当に置いておくだけで十分育ちます.
一般的な植物と比較しても特に異なる点はありません.
水やりの時間帯も諸説ありますが,個人的にはいつでも良いと思っています.
湿度に関しては60%以上を目指し,温度も10−30℃程度(ベストは20〜25℃前後)であれば問題ないと思います.また日中と夜間の温度差があるほど調子が良いきがします.
光量に関してはルクスで表現するのであれば,緑葉種で2000ルクス,銀葉種であれば5000ルクス程度確保出来ていれば,経験上通常の栽培には問題ないと思っています.(岩着生など強光を必要とする種は除きます)
またLEDでも15000-20000ルクス程度になると葉焼けする事があります.
明るく見えても光量を測定すると,<2000ルクス以下であることも多々あります.大切な株をしっかりと育てたい場合は必ず光量は測定しましょう.
肥料に関しても最適な栽培環境が確保できるまでは使用する必要はないです.
肥料の役割は植物を元気にするわけではなく,絶好調の株をさらにブーストする事です.不適切な環境で肥料を使用した場合,肥料やけや,場合によっては真菌の繁殖を助長してしまう可能性があります.
※ フンキアナやアンドレアナ等は低温に弱いようで,20℃程はたもった方が良いそうです.逆に高山性のマクドガリーやペナスコエンシス等は高温に弱いとされています.
※ また,野生株は日本の気候に慣れていないため,日本の環境に純化するまでに枯れてしまう可能性が高いです.こればかりは仕方ない事だと思いますし,到着した時点ですでに枯れていることも多々あります.野生株を購入する際は,枯れて到着した際に返金や代品の発送が可能か必ず確認し,また到着した際には根元をよくチェックして枯れていない事を確認しましょう.
到着した時はしっかりしていた株で,すぐに枯れてしまった株は悲しいですが諦めましょう.
⭐️ インテリアプランツって何?
もともとチランジアは栽培に土が必要ないため,ガラスケースに入れたり,お洒落な容器に入れたりしてインテリアの一部として使用する事ができます.
しかし,水やりが必要ないと謳われていたこともあり,インテリアプランツとして迎えられたチランジアはすぐに枯れてしまう事例が多発しました.
また,インテリアの一部として使用されるため,植物として扱われなかったりすることもあり,この’インテリアプランツ’といった用語に批判的な意見を持つ栽培家も多数います.
個人的には一般人がチランジアに興味を持つ良いきっかけにもなり,またしっかりと環境を整えさえすればガラスケースに入れようと,何の上に置こうとも問題なく育つため,ある程度栽培のコツが掴めた方はどんどんお洒落な飾り方を試していただきたいと思っています.
⭐️ 栽培難種
どんなに気を遣っていても,すぐに枯れてしまったり,徐々に衰退していく難易度が高い種があります.
大まかな難易度順にまとめていきます.
☁️ 工夫が必要だがそこまで難しくない
● Tillandsia xiphioides: 乾燥や暑さ・寒さには強いが,逆に弱光や蒸れに弱い. 環境の変化にも弱いのか,購入してしばらくは下葉が枯れることがある.日照と通風を確保できていれば容易に栽培できる.
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☔️ 要注意
● Tillandsia velickiana, matsudae:それぞれ紫花と白花で草姿もよく似ている.暑さに弱く,水を好み,そこそこの通風も必要で,それなりに光も必要,となかなか難しい.velickianaに関しては100円均一ショップ等にも置いてあることがあるが,それにしては難易度が高め.
● Tillandsia humilis:
⚡️ 非常に難しい
● Tillandsia biflora: 言わずと知れた難種.独自の草姿や美しい花に惹かれて購入するものの,暑さに弱く夏場に枯らしてしまうことが多い.
● Tillandsia aurea: こちらも難種で,長期栽培は可能だが,徐々に衰弱し小株がうまく育たず枯れてしまうことが多い.我が家でも,開花不全→小株が育たない→衰弱 といったサイクルで2年ほど栽培して枯れてしまう.